銅彫刻

渋谷に到着し、いつものようにセンター街のマックに向かう。。。はずだった。
しかし足はマックの前で止まらず、スペイン坂を経由して公園通りへ。
そのまま原宿方面へ歩きつづける、特にどこを目的にしているわけでもなく。
代々木第一体育館の横を通過し、原宿駅に到着。しかしここからどうしたらいいのか。
本当ならフラ語を勉強しようと思って家を出たはずだ。
でもその時点でその気持ちはまったくない。かといって、何か目的があって歩いているわけでもない。僕は歩きたいから歩いているだけだ。どこかに行きたいから歩いているわけではない。ただ歩きたいのだ。
途中、ブルーハーツの「ラブレター」を繰り返しで聞きまくる。どれくらい聞いただろうか。途中で少し飽きてきたけど、それでも聞く。「こりゃ自分、よほど重症だ」と思った。
表参道を歩いていて、突然思い出したことがある。
実家にある自分の部屋には、中学校の頃に作った銅でできた彫刻がある。
それを作ったのは中学三年のことだ。花だったり動物だったり、各自それぞれが好きなものを作ることができた。僕は迷わずある魚の彫刻を作ることに決めた。
作り始めてみると、大変だったけど事のほか楽しかった。銅版を金づちで叩いたりプレスしたりバーナーで炙ったりして、色々と手を加えた結果出来上がった。
もともと不器用な自分は、昔から「美術」は苦手だった。けど、その品はいつになく上手くできたのだ。そうじゃなかったら部屋にも飾ることはなかっただろう。
けど、部屋に飾ったのは、単に上手く仕上がったからという理由の他に、別の理由があった。
その理由を思いだしたのだ。そうだ、あの作品は「ヒラメ」を作ったんだ。何で「ヒラメ」かって?そして何で部屋に飾ってたのかって?そりゃあねぇ・・・。
こんなことを考えながら歩きつづけ、気がつくと青山通りにいた。もうすぐ渋谷だ。
気持ちが少し落ち着いたところで、ようやくマックに入ってフラ語の勉強。
実家には今でも「ヒラメ」は飾ってある。