手相

今日、新小岩の駅前で「すいません、手相の勉強をしてるんですけど、もしよければ手相を見せていただけませんか?」と声を書けられる。
実は同じようなことがつい最近あったばかりだ。渋谷を歩いていたら、21歳の男性に声をかけられ、手相の勉強をしているから見せてくれとお願いされた。
どちらも言うことは結構似ていた。が、ここには新小岩でのやりとりを書く。
前半は「ああ、生命線が長いですね」「知能線が長いですね」と褒めまくる。
その次に、しばしば自分自身の素性について質問がなされる。職業、将来の夢、恋愛や結婚のこと、老後のことなど。相手のリアクションに乗せられ、自分もつい調子に乗って初対面の男性に向かって色々と熱く語ってしまう。
自分についての話が一通り終わると、(頃合を見計らったかのように)女性が現われる。聞けば、自分に声をかけてきた男性と同じところで手相の勉強をしているそうだ。そして私にも手相を見させていただけますかと言われる。その女性から言われる内容は男性の言ったこととそう変わらない。
実は渋谷で手相を見せたときも、男性と話をしている最中に女性が現われたし、新小岩でも同じ展開だった。どちらも女性が男性を偶然発見してという形ではある。今から考えると、もしかしたらこれは計画された筋にそった行動だったのかもしれないなと思う。
とにかくだ。女性も交えて三人で私の手相についてのトークが続く。さっきまで私の手相を褒めまくっていた男性は何やら不安そうな面持ちに変わっていく。どうしたんですか、そう私は質問する。男性が答えて言うには、私は今人生の転換期にいるらしい。人間の人生には三度の転換期というものがあり、私は一度目の転換期に直面しつつあるそうだ。しかし男性曰く、転換期ということはわかるのだが、自分はまだ勉強の身であるから転換期を迎えた私の運勢がどの方向に進むのかまでは分からないのだという。もしかしたら良い方向に運勢が向かうかもしれないし、もしかしたら悪い方向に行くかもしれない。だけど、自分はそれが判断できないというのだ。
なんと無責任な!と思った。が、同時に次にどんな話が展開されるのか予想がついた。案の定、彼はこう言った。「自分の手相の先生に見てもらえば、80〜90%わかります。普段は忙しいお方ですから、社会人の方や年配の方を中心にみておられます。けど、私から言って特別に紹介してあげますよ。いかがですか?」
おっ、いよいよ確信に迫ってきたなと思った。しかしこれ以上関わったら面倒くさそうだったので、「いや〜いいですよ。そこまでしてもらわなくても結構です」と断る。
すると案外あっさりとした答えが返ってきた。「わかりました。今後、あなたのやられている学問で何らか得るものがあると思います。だから頑張ってください」
こうして、最後は人生の応援をされて終了。あんまりすっきりしない。やっぱり面倒くさくても、手相の先生のところまで行った方が面白い展開になったのだろうかと少し後悔。けどまぁいいや。多分また声かけられるだろうし。
これまで「手相見せてください」と言う兄ちゃんには基本的に正直に答えてきた。将来の夢はなんですか?なんて聞かれたら、「うーん、大学の教員ですかねぇ」とか。けど、もし今後同じように声をかけてきたら、ためしに嘘ついてみよう。
24歳で農家の後継ぎです、と。結婚はしていて、娘が一人います。なーんて言ってみよう。
ちなみに、兄ちゃんに「僕最近しょっちゅう『手相みせてください』って声をかけられるんですよね。あなたはどうして僕に声をかけようと思ったんですか?」と質問してみた。すると、「あなたの表情がよかったからです。それに顔を見て、骨相がすばらしかった」
これに対しては苦笑いするしかなかった。もし自分を手相の先生のところに送り込むためのカモとして狙っていたならば、引っ掛かりそうな顔をしていたということだから。彼の口から出てきたのは褒め言葉ではあるけど、素直に喜べなかった。