ふりだしへ戻れ!

あの時を「ふりだし」と考えてみる。
最初、「ふりだし」には長時間浸かっていられなかった。
ひどく熱かったからだ。
しばらく浸かったあと、歩を進めるべくサイコロを投げた。
しかしサイコロはなぜか「0」しか示さない。
おかしなことに、何度ふってもやっぱり「0」以外の数字は出てこない。
そのうちに、「ふりだし」の温度は冷めてきた。
とっても気持ちがよいのでしばらく止まることにした。
でも、それじゃいけない。いけないのだ。
ずっと「ふりだし」に浸かっていたいのだけど、僕は浦島太郎にはなりたくない。
だからこれまで幾度も「ふりだし」からの出発を試みてきた。
もう数えればきりがないほどだ。
しかしその試みは程度の差こそあれ、すべて失敗に終った。
なんたって「ふりだし」は居心地がいいのだ。
少し進んでも、また帰ってきてしまう。
そのうち、「ふりだし」がもともと熱かったということを忘れてしまった。
いや、忘れたというよりは、認めなくなったのだ。
「ふりだし」はずっと気持ちよいところ、ずっとずっと昔からね。
そしたら益々「ふりだし」は気持ちよい場所になった。
だけど、同時に益々「ずっとここにいてはいけない」という気持ちになった。
結局この8年間、僕はずっと「ふりだし」の周りをぐるぐるとまわっていたんだ。
そう、ぐるぐるぐるぐる。
いつか「ふりだし」が「ゴール」へと反転する日はくるのだろうか。
そう信じたいけど、やっぱりそうであってはいけない。
「ふりだし」にとどまる限りは、「ふりだし」は「ふりだし」のままなんだ。
気付いた時には浦島太郎になっているだろう。
浦島になりたくないなら、「サイコロ」をたくさん振ろう。
たとえ何度だって「0」が出てもいい。
まずは振らなきゃはじまらないんだから。